かつて、フランス語で20代を意味する、Vingtaine (ヴァンテーヌ)というファッション雑誌がありました。
とにかくこの雑誌が大好きで、年間定期購読までしていました。
これほど発売日を心待ちにした雑誌は、後にも先にもありません。
まずは、匂いを嗅ぎます。
変態っぽいですが、新しい本の匂いが好きなんです。笑
そして表紙を堪能。
タイトルの色合いと、表紙の写真が見事にリンクしていて毎回ため息です。
楽しみのドキドキと、そしてなぜか緊張のドキドキで、ページを開きます。
光野桃さんのエッセイ。
これを読むと、一気にVingtaineの世界観に引きずり込まれます。
今では当たり前になっている「甘辛バランス」も、実はこの雑誌から。
衝撃でした。
服や小物を「甘口」「辛口」に分けてそのバランスでコーディネートを組み立てていく・・・
「甘口」「辛口」なんてカレーぐらいしか使いませんでしたからね~。
この表現に従うと、自分の持ち物が簡単に仕分けできるのです。
「自分の服は辛口が多いから、甘口の小物を買い足そう」とか・・・
そーゆーことか!と。
的確な表現で、コーディネートの理論、組み立て方、方程式をビシビシ鍛えてくれる感じ。
「何を着るかではなく、どう着るか」を教えてくれるのです。
シンプルで品があり、年相応の凛とした可愛らしさ・・・
そんなファッションを敢えて外国人のモデルさんを起用してお手本を示し、「自分の解は自分で見つけましょう」というスタンス。
まさに「教科書」です。
ファッション雑誌にしては文字が多いのも好きポイント。
大袈裟でなく、服を通して「自分の軸」「生き方」「あり方」などの精神面もビシビシ突いてきます。
写真もとんでもなく美しいのですが、「ファッション理論」「ファッション哲学」も読み応え十分です。
「厳選した服を何通りにも、しかも自分らしく着こなす」
そんなコンセプトだったので、コーディネートによく登場していた「常連さん」もたくさんありました。
「アガタ・パリ」のテリアのチャームや「フォリフォリ」のピアス、「ナラ・カミーチェ」のブラウスなどなど、手の届く値段のものもたくさんあったので、悩みに悩んで購入したのも良い思い出です。
バブルだったしね。
「カルティエ」のタンクは、あの時も、今も、そしてこれからもずっと憧れです。
凛とした青の針と竜頭、そして端正な四角いフェイス・・・自分の好みドンピシャ。一目惚れです。
どれにしようかあれこれ調べてさんざん悩んで、茶色の革のベルトのやつにしよう!と決めましたっけ。
買わない、いや買えないけどね。笑
そしてもちろん、素晴らしいのはファッションだけじゃありません。
メイクはもちろん、コラムやマナー、インテリアに料理、旅行、グルメ、映画、音楽、書評、それから巻末の協力店まで! 笑、読み応えたっぷり。
「悪童日記」「ワイルドスワン」などここで知った本を購入したのは数知れず、です。
そしてそして、藤原美智子さんのメイクとエッセイ!!
もう、本当に素敵でした。
こちらもファッションと同じで「理論」「哲学」が感じられ、心に響きます。
ヘアスタイルブックが別冊でついていると、ウキウキで美容室に持っていきました。
くせ毛がひどくて、同じようにならないってわかっているんですけどね~。若かったんだね。
とにかく、捨てページなんてありません。紙面全てに手抜きなし!!
この「凛とした」ファッション雑誌が大好き過ぎて、次の号まで毎日毎日・・・飽きずに繰り返し見ていました。
昨日はあまり好みじゃないと思ったコーディネートが、今日は突然素敵に見えたり。
日々発見があるんです。
そして、なぜか元気が出るんですよね。
嫌なことがあっても、雑誌をパラパラしているとスッと自分を取り戻すというか、リセット出来るというか・・・
そんなヴァンテーヌですが、時代の移り変わりとともにコンセプトも変わっていき・・・とうとう休刊になってしまいました。
もちろん、変わったのはヴァンテーヌだけではありません。
自分も環境も変わり、次第に雑誌から遠ざかり、引っ越しのたびに雑誌も服も、アクセサリーも少しずつ手放していきました。
今、残っているのは「ナラ・カミーチェ」のブラウス1枚とシミのついた保存版のレシピブックだけ。
・・・今の自分を表しているようですね。
あれから三十年・・・綾小路きみまろじゃないけれど・・・ヴァンテーヌの代わりとなる雑誌はありません。
ファストファッション全盛期の今、+30をした方程式を自分で解かなければならないのですが、私には難問すぎます。
コツコツやっていればよかったんでしょうけどね、さぼりすぎました。
Vingtaine+30=Cinquantaineという雑誌で復活してくれないでしょうか。
月刊誌は難しくとも季刊誌なんかで・・・こんな劣等生の為に補習授業してほしいです。
「凛とした」「端正」「意思」「潔さ」そんな言葉が躍っていた大好きな雑誌、ヴァンテーヌ。
「50代の今」をどんなファッションで、メイクでそして言葉で表現するのか是非見てみたいのです。